マスキングによる防食処理のうえ、腐食液を用いて不要箇所を除去する金属加工方法、エッチング(フォトエッチング)加工。
他の加工方法では実現することができない精密度の高い加工にも対応可能な方法で、複雑形状の製品や極小・極薄の製品にも適応します。
そのため、民生用途や産業用途など、実に幅広い分野で活用されてきました。
そんなエッチング(フォトエッチング)加工の一般的な流れ(工程)を、以下にまとめました。
1~8のステップに分けて作業の主な内容を紹介しているので、各ステップずつ、アロン社一関工場の様子とともにお届けします。
まずは図面・データを基にCADシステムに入力し、レーザプロッターを使用してフィルム感材・ガラス感材に精度の高い描画パターン(フォトマスク)を作成。
【写真】アロン社一関工場でのフォトマスク作成工程。素材や加工部分ごとに溶解されやすさが異なるため、クライアントが用意した図面やデータそのままでフォトマスクを作成してしまうと、加工部分が図面やデータよりも大きくなったり、小さくなったりすることがあるため、そのあたりを考慮しながら補正していくそうです。
エッチング(フォトエッチング)加工の加工対象は、主にステンレスや銅合金といった金属材料です。材料は購入したままだと、汚れ・油分がついているため、加工前に脱脂と洗浄を行います。
具体的な前処理の方法は金属材料により違いがありますが、後の工程に影響が出ることのないよう、丁寧な処理が行われます。
【写真】脱脂・洗浄を行う装置。薬液がまんべんなく噴射されるような、アロン社製オリジナルマシンです。
アロン社では1メートル幅の装置を自社製作しています。
大きな材料の投入が可能である他、小さい材料であれば二列三列一度に洗浄ができるため、その分効率がよくなります。それは発注側にとっても、メリット大。
洗浄ラインに限らず、この後の工程も1メートル幅の装置で統一されています。「欲しい装置がなかったら作る」というアロン社ならでは。
ステップ2できれいに清浄化された金属材料の両面に、フォトレジストをラミネートさせます。
フォトマスクと金属材料を真空密着させ、光(UV)を照射すると、フォトマスクで遮光されていない箇所のフォトレジストが感光・硬化し、フォトマスクのパターンが転写されます。
ステップ3と4は、品質担保のため、クリーンルームでの作業が重要となります。
【写真】ラミネートと露光を行うためのクリーンルーム。アロン社のクリーン度はクラス1,000。
ステップ4で露光転写されたフォトレジストの未感光部を薬品で除去します。これにより部分的に金属が露出されます。
【写真】こちらも洗浄ライン同様に、アロン社製オリジナルマシン。ノズルの形状と配置に工夫があり、水流を均一にし、薬品が当たらない部分を作らないようになっています。
同じ機械が何台かあるのは、BCP対策の一環です。
エッチングマシンを用いて、エッチング液(金属や金属酸化物を腐食させる薬品)を吹きかけます。これにより、露出した部分の金属のみ溶解除去され、パターンどおりに金属材料が加工されます。
金属材料の表面に残ったレジストによる保護箇所を取り除きます。その後、洗浄を行い、検査へと進みます。
最後に、外観検査や寸法検査といった検査を実施し、品質管理を万全にします。
エッチング(フォトエッチング)加工についての詳しい解説はこちら
当サイト【匠の加工】は、「エッチング(フォトエッチング)加工と拡散接合」専門会社であるアロン社の取材協力の元、川嶋印刷株式会社が運営しています。
一つ一つの工程にクオリティを高める工夫があり、その積み重ねによってクオリティが変化することが工場の取材でも感じられました。
当たり前の基準を高く持ち、それを遂行する。どんな仕事にも通じる、大事なことを改めて教えてもらった気がします。